[考察]メタバース事業をスタートして感じた「メタバースの価値」を改めて要素分析してみた。

メタバース
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こんにちは!
kohekoheこと、株式会社comatsunaの吉岡と申します。

私はリアルの世界で精神科医として働きつつ、メタバース×コミュニティによる総合ヘルスケアサービス「メタバースクリニック(メタクリ)」を運営しております。

メタクリの誕生秘話はこちら

サービス開始から4か月程が経過し、先日はテレビ取材の機会を頂くなど、少しずつですが、着実に歩みを進めているところです。

そんな中、医師という立場もあり、メタバースと医療に関するご質問を頂く機会が増えたり、自身でもメタバース医療交流会等で講演を開催するようになり、

そもそもメタバースって、
何が素晴らしいのだろう?
どんなところに価値があるのだろう?

ということについて、

自分でもちゃんと深く考えたことが無かったことに気付き、この辺りで改めて整理してみようと思い立ちました。

そんな理由で、今回は、メタバースの価値を要素分析してみました。

尚、この分類は、メタバースやVRの専門家の方の意見を参考にした訳ではなく、あくまで私自身が、これまでの経験などから独自に考えた分類になりますので、もっと重要な要素があるとか、間違っていると思うとか、様々なご意見はあるかと思います。そんな時は是非、コメント欄からご意見いただければ幸いです。

では早速、それぞれの要素について解説していきたいと思います。

メタバースの要素分析

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メタバースの価値の要素分析

①遠隔通信性
②アバターコミュニケーション
③アバターの自由度
④立体視認性
⑤空間構築性
⑥インタラクティブ性(双方向性)

遠隔通信性

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まずは遠隔通信性です。
これは文字通り、メタバースを使って「遠隔通信が可能」という価値です。

見えない相手、遠くにいる人と会話が出来たり、一度に沢山の人と会話が出来るといったことが挙げられます。インターネット環境さえあればどこからでもアクセス出来るという点も当てはまります。

遠隔通信性と聞いてすぐに思い浮かぶのは、電話やチャットに加え、今では社会に広く普及するようになった、zoom等のオンラインビデオ通話ですよね。

医療分野においても、コロナの影響もあり、オンライン診療への流れが一気に進みました。

そういった背景もあり、メタバースで医師が何かをやり始めたと聞くと、だいたい尋ねられるのが、

「メタバースでオンライン診療は可能になるのか?」

という質問です。

これについては、また別の機会で自分の考えを詳しくお話ししますが、メタバースでの遠隔通信性という価値によるオンライン診療への応用は、基本的には現状難しいと思ってます。

何故なら、遠隔通信性という価値は、すでにオンラインビデオ通話で充分にカバーされているからです。

そもそも、オンライン診療反対派の意見としては、「患者さんを実際に視たり接触せずに診察は成り立たない」という考えがあります。
この考えは、いち医師として、非常に理解できる部分でもありますが、一方で、物理的要因や身体的要因で手軽に医療機関にかかれない患者さんの利便性が向上するというオンライン診療の明らかなメリットも理解できますので、私はオンライン診療自体には賛成している立場です。

そして、スタートしたばかりのオンラインビデオ通話を中心としたオンライン診療を、わざわざメタバースに置き換えるという理由が現状、見当たらないのです。

メタバースで診察をした方が良いというそれ相応の理由や、オンラインビデオ通話に対しての明らかな優位性が示されない限りは、オンライン診療をメタバースで実施する方向への法改正が進むことは難しいのではないかと個人的には考えています。

アバターコミュニケーション

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続いて②アバターコミュニケーションです。
こちらは、「アバターを介してコミュニケーションがとれる」という価値です。

これは、今までにない明らかなメタバースの価値であると思います。

約20万年の人類の歴史上、アバターを介して人がコミュニケーションをとっていた時代は過去にはないので、メタバースの出現というのは、人類が新たなコミュニケーション手段を手に入れたといっても過言ではないと感じています。

アバターを介するコミュニケーションのメリットとして、
まず、匿名性やプライバシーの確保が挙げられますが、こちらは、①と同様に、オンラインビデオ通話でも提供可能な価値です。

では、アバターコミュニケーションについて、オンラインビデオ通話と比較し、どのようなメリットがあるでしょうか?

それは、
・プレゼンス(そこに存在している感覚)が得られやすい
・心理的障壁の低減

等が挙げられます。

海外の文献では、メタバース空間で行ったプレゼンテーションの方がリアルなプレゼンテーションよりも不安を感じないと答えた学生の割合が多かったとする報告があります。

また、オンラインビデオ通話と比較して、アバターの方が、発話量の増加や自己開示性が促進されるとする研究報告もあり、

以上の観点から、アバターコミュニケーションには、オンラインビデオ通話では成しえない価値をもたらす可能性が示唆されます。

また、アバターコミュニケーションがもたらす心理的効果について、例えば、見た目のコンプレックスで周りに引け目を感じ、他者とコミュニケーションを取るのが苦手と感じている人や、相手に表情を読まれるのが怖いと感じてしまう人、あるいは、相手の表情を必要以上に気にし過ぎてしまう人(所謂、HSP)等にとって、アバターコミュニケーションは快適さをもたらす可能性があると思います。

さらに、より実用的な観点から見ると、オンラインビデオ通話でのやり取りでは、さすがに最初と最後くらいはエチケットとしての「顔出し」が必要となりますが、アバターコミュニケーションでは、最初から最後まで一切、「顔出し」する必要が無く、髪型や化粧、服装を気にせずに参加出来るというメリットが有ります。(最近では、アバターによるオンラインビデオ通話という選択肢も有りますが)

研究分野においては、スマホやPCからメタバースに参加し、アバターとしての自分が他者とやり取りする姿を俯瞰的に眺める体験が、他者の感情を推し量ったり、自分と他者の距離感をつかむのに必要なミラーニューロン形成を促すのではないかという仮説に基づき、自閉症児の人称代名詞の習得に活かそうとする研究も海外で行われています。

このように、アバターコミュニケーションは、メタバースの価値の重要な要素の一つとして、今後も様々な可能性を感じる領域です。

アバター自由度

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メタクリ酒場の様子

さて3つ目は、アバター自由度です。

こちらは、アバター自体を自分好みにアレンジしたり、自分の理想とする姿のアバターを身に纏うことが出来るという価値になります。

興味のない人にとってはあまりピンとこないメリットかもしれませんが、リアルな肉体を越えて、本来の理想的な自分の姿になれるということは、新たな自己表現の手法として非常に重要な価値があると思います。

こちらの価値は、「バ美肉」に代表される新しい日本文化の醸造にも繋がっており、スイスの人類学者の女性が「バ美肉」をテーマとした修士論文で、ジュネーヴ大学のジャンダー分野の学術賞を受賞したというニュースも記憶に新しく、海外からも非常に注目されている領域といえます。

アバター自由度から見たメタバースの価値は、性的マイノリティにも優しい社会の実現や、SDGsとの相性の良さからも、現代社会と高い互換性を示すのではないかと考えられます。

立体視認性

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4つ目は、立体視認性です。

こちらは、「3Dの構造物を空間の中に自由に配置することが出来る」という価値です。
メタバースというより、XR(VR, AR, MR)技術の賜物ですが、3Dで構造物を空間内に投影することで、実物大の把握、回転、拡大や縮小、構造物の裏側の視認など、構造物への理解度を高める効果が得られます。

立体視認性のメリットを生かし、医療に限らず様々な分野において、学会、セミナー、勉強会などとの高い互換性からすでに広く実用化が進んでいる領域です。

また、立体視認性という価値は、3Dで商品を展示しながら接客や説明が可能となる事から、展示会や店舗型ビジネスへの応用が期待できます。Spatialの様に、NFT作品の展示から、販売プラットフォームへの連動が可能なメタバースも出現してきています。

空間構築性

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Spatialに構築した喫茶店

続いて、5つ目は空間構築性です。

こちらは文字通り、「空間自体を自由に構築できるという価値」です。
これは説明するまでも無く、メタバースの価値の一つとしてあげられると思います。

どんな空間も思いのままに構築可能なメタバース空間においては、物理的条件や気候条件等にも左右されず、広大な土地に家を建てたり、イベント会場なども簡単に構築することが出来ます。

実際にやろうとしたら莫大な費用がかかることが簡単に実現できるのがメタバースです。本当に夢がありますね。

また、3Dスキャン、フォトグラメトリ技術も急速に進歩しており、誰でも手軽に実在の空間をメタバースで再現することが出来るようになってきました。

これにより、例えば、不動産の内覧をメタバースで行ったり、医療の分野で言えば、診察室や待合室をメタバース空間に再現することで、患者さんの受診前不安の軽減等へ活用することが出来ると考えられます。

インタラクティブ性(双方向性)

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VRCHAT上に構築したストレス発散ワールド

メタバースの価値の要素分析、最後の6つ目は、インタラクティブ性(双方向性)です。

インタラクティブ性とは、ユーザー自身が空間内を自由に移動したり、物を持ったり、投げたり、空間やその構造物に対して介入を加えられることを意味します。

例えば、VRCHATでは、アバターによっては空を飛ぶことが出来たり、自分のアバターの一部に触れたり、相手のアバターの一部に触れたりすることも可能になっています。

このようなインタラクティブ性を利用することで、様々なユーザー体験の提供が可能となります。
身体リハビリ、認知症予防、メンタル医療の領域などで応用が進み、VRデバイスとの併用による没入感を利用したコンテンツの開発が拡がりつつあります。

我々のサービスにどう活かしていくのか

以上、メタバースの価値を要素分析してみました。
という記事でした。

次回は、上記のようなメタバースの価値を踏まえて、私はどのように考え、自身のサービスである「メタクリ」の中で活かそうと考えているのか

ということについての記事を書いてみたいと思っています。

メタバースのコンサル承ります!

株式会社comatusnaではメタバースを利用した交流会をはじめ、医療、社会支援、ビジネス、その他、メタバースで何かを始めたい方、コンサルティングを承っております。
 内容次第ではオリジナルルームも無料制作させて頂いております。
 
是非、お気軽にご連絡下さい^_^

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Kohei Yoshioka(kohekohe)|note
メタバースクリニック運営者|精神科専門医・精神保健指定医・産業医・麻酔科標榜医・元麻酔科専門医|株式会社comatsuna代表(comatsuna.jp)|Baseクリニック赤坂院長(bc-cl.jp)|デジタルヘルスケア事業で社会に貢献する

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