[書評]まさにメタバースの教科書!メタバース さよならアトムの時代

メタバース
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こんにちわ。comatsunaのマツオカです。

メタバース関連の書籍を紹介していきたいと思います。

前回は「バーチャル美少女ねむ」さんが書かれた 【メタバース進化論 ~仮想世界と荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界】についてのご紹介しました。

今回は加藤直人さんの著書である【メタバース さよならアトムの時代】についてのご紹介です。

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本書の3つの特徴

この本にはその他のメタバース本と比較して大きく3つの特徴があると思いました。

  1. メタバースプラットフォームを運用されている方が書かれた本である点
  2. 数年前のVRブームの頃から事業をされて来た方の独自の視点
  3. 著者には数学者としての一面がある

一つ一つ見ていきましょう!

著者紹介

まずは著者の紹介です。

クラスター株式会社代表取締役CEO。1988年大阪府生まれ。京都大学理学部にて宇宙論と量子物性論を研究。同大学院を中退後、スマホゲームを開発しながら約3年間のひきこもり生活を過ごす。2015年にVR技術を駆使したスタートアップ「クラスター」を起業。2017年、大規模バーチャルイベントを開催することのできるVRプラットフォーム「cluster」を公開。現在はイベントだけでなく、好きなアバターで友達としゃべったりオンラインゲームを投稿したりして遊ぶことのできるメタバースプラットフォームと進化している。経済誌『ForbesJAPAN』の「世界を変える30歳未満30人の日本人」に選出。

本書著者紹介より

メタバースプラットフォームの一つであるクラスターの代表取締役CEOの方ですね。これがまず第一の特徴で、プラットフォームを運用されている方が書かれた本というのがその他のメタバース本との違いの一つです。

クラスター(cluster)とは?

今更紹介する必要もないかも知れませんが、クラスターは国内最大級のメタバースプラットフォームです。

メタバースプラットフォームなので、3Dのアバターをユーザーが選んでバーチャル空間に入り、公開されているワールドを散策したり、イベントや音楽ライブに参加したりする事が出来ます。またSNSの機能もあり、ユーザー同士がフレンドとなり、チャットや音声でコミュニケーションできます。

クラスターでは様々な企業が大型のイベントを行っていて、条件付きではあるが同時接続が数十万人出来るのが大きな特徴と言えるでしょう。

メタバースプラットフォーム cluster(クラスター)
「cluster (クラスター)」はスマートフォンやPC、VR機器など様々な環境からバーチャル空間に集って遊べるメタバースプラットフォームです。

本書でのメタバースの定義

様々なメタバース関連の本を読むうちに著者の立場によってメタバースの定義が違い、それが書籍の内容にかなり影響を与える事が分かってきました。

なので本書でのメタバースの定義をお伝えしたいと思います。

本書でのメタバースの定義
  1. 永続的に存在する
    現実世界と同様に体験が一続きになっている必要がある
  2. リアルタイム性
    リアルタイムに他者と体験を共有出来る
  3. 同時参加人数に制限がない
    現実では不可能な人数も同時に参加する事が出来る
  4. 経済性がある
    持続的に発展していく為に重要条件
  5. 体験に垣根がない
    デジタル世界と現実世界をシームレスに繋ぎ、プライベートとパブリックなネットワークおよび体験を跨ぐ存在であるべき
  6. 相互運用性
    異なるベンターによる製品間でも問題なく接続し運用出来る
  7. 幅広い企業・個人による貢献
    企業、個人問わず誰でも参加でき貢献出来る
  8. 身体性
    身体感覚の共有。

著者はこれが特に8の「身体性」がメタバースに一番大事だと言います。やはりこの定義は著者が運営するクラスターのサービスのよく反映されていると思います。

更に

マシュー・ボール(メタバース投資家)はデジタルとフィジカルを行き来する事がメタバースだとしているが、僕はむしろデジタルでフィジカルを実感できることがメタバースだと考えている

本書より

この考えは本書の全編を通して一貫しており、本書の内容にも強く反映されています。

数年前のVRブームの頃から事業をされて来た方の独自の視点

私が思う本書の二つ目の特徴は、2015年頃のVRブームの時から事業やられている方の視点から書かれている事かと思います。

第2章の「メタバース市場のそのプレイヤーたち」でメタバース関連の事業者、プレイヤーをメタバース市場について説明しながら詳しく説明してくれます。

さらに、第4章の「VRという技術革新」もリアルタイムで体験して来た方からの視点が面白いです。

私自身も本書に登場するある企業に過去数年在籍していた経験があり、過去のVRブームを身を以て体験した一人です。当時のHMDデバイスの発売ラッシュから日本のコミュニティの活発な動きまで、解説されておりとても懐かしく振り返る事が出来ました。

なので当時を知らない方でも、2010年代の第2次VRブームから昨今のメタバースブームまでの流れがよく分かると思います。

これはきっと中で生きて来た人にしか書けない内容です!

さよならアトムの真意とは?

本書のもう一つの特徴が著者の起業家とはまた違う一面である数学者としての一面を持っている点です。それは第3章である「人類史にとってのメタバース」の章で詳しく解説います。この章こそが本書のサブタイトルである「さよならアトムの時代」を真意を説明した章であり、私自身もここに最も興味を引かれました。

  • 「計算」は身体に深く結び付いている
  • 万能マシンが人類を計算から解放した
  • 現実世界をは全てシミュレート出来るのか
  • 情報を動かすバーチャリティの時代
  • 主役はアトムからデータへ

説明するのが難しい概念も含む為に詳細は割愛しますが、上記のような考えにピンと来られた方は是非手に取って読んで見ていただければと思います。

項目ごとのサマリーが優秀

上記の3つの特徴以外で私が本書で素晴らしいと思った点は各章ごとのサマリーが非常に分かりやすい点です。

なんだそんなこと?と思われるかも知れませんが本当に分かりやすいです。

本記事を読んでもし本書が気になった方がいらっしゃったら、まず本屋に行かれてこの各章のサマリーをご覧になる事をお勧めします。その上でさらに詳しく知りたいと思ったら是非購入して読んで頂ければと思います。

メタバースに関する幅広いトピックを分かりやすく解説したまさに教科書

以上、お伝えした以外にも本書は「メタバースが何か」といった内容に始まり、各事業者(プレイヤー)に関する事、更には著者独自の考えである「アトム(物質)からの脱却」やメタバースでの日本の優位性といったと内容まで幅広く、しかも分かりやすく解説したまさに「メタバースの教科書」であると言えます。

メタバースそしてclusterの未来が楽しみになりました。

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